君が与えてくれるもの







ふわりと自分の髪に触れる優しい温もりと、朧げな意識の中に染みこんでくる歌声。
その歌には聞き覚えがないはずなのに、何故だか懐かしく感じる気がした。

聞えてくるのはその歌声だけ。
ポツリ、ポツリと紡ぎだされる心地よい透き通った声。
それが誰の声なのかなんて顔を見ないでもわかってしまう。
眠る前まで一緒にいた人物の顔をふと思い浮かべながら、歌声に浸る。

しかしピタリと歌声が止まり、先ほどまで自分の髪を撫でていた温もりが離れた。
それに気がついたゼロスは重たく閉じていた瞳をうっすらと開かせる。


「しいな?」

「あれ、起きちまったかい?」


目を開けるとしいなの顔が一番初めに瞳に映った。
ゼロスはぼんやりとしいなの顔を眺めながら寝起きのためか掠れた声で呟いた。


「さっきの歌・・・なに?」

「あぁ、あれかい?あたしの里に伝わる子守歌だよ。」


子守唄。
どうりで懐かしいと感じるわけだ。
別に母親が歌ってくれたなんていうんじゃない。むしろそんな歌さえも知らずに育った。

けれども何故だかその歌が懐かしく感じた。
それがどうしてかと言われてもきっと答えられないのだろう。ただ・・・無性に温もりが恋しくなった。


「しいな・・・」

「ん?なんだい?」


ゼロスの呼びかけにしいなは顔を近づける。
キョトンとした表情を浮かべながら自分を見つめてくるしいなの頬に手を添える。
そんなゼロスの行動にしいなは顔を真っ赤にしながら焦った。


「な、ななにするんだい!」

「何って・・触れただけだけど・・・?」

「そ、それは見ればわかるけど・・・」


真っ赤になりながらも強気というか頑固というか・・・。
そんなしいなを見つめながらゼロスは口元に笑みを浮かべる。




手を伸ばせばそこに温もりがあって。

求めればたくさんの優しさで返してくれる。

彼女が与えてくれるものは確かに今の自分が求めるもの。

優しさ、温もり。そして愛情・・・。





「しいな。」

「今度はなんだい!」

「さっきの歌・・・もう一度歌って。」


ポツリと甘える子供のようにそう言ってきたゼロスの言葉が、しいなにとっては余程驚くことだったのか、
しいなは目を丸くして首を傾げる。そんな彼女の表情1つ愛しく思えてしまう。


「さっきの歌って・・・子守唄のことかい?」

「そ・・俺さまもう少し寝るから・・・歌ってて・・・。」

「・・・しょうがないねー」


そう言ってゼロスはまた瞳を閉じる。
そんなゼロスに呆れたように溜息を吐き出しながらもしいなはまた歌いだす。
そうして心地の良い歌声と共に、自分の髪を優しく梳く確かな気配の中ゼロスはまた眠りにつく。




懐かしく、心地のよいその歌と共に・・・。



























++あとがき++

うーわー・・・とうとうやってしまったよ・・・。何だか最近はゼロしいがフィーバーしてます。
やっぱり「アホしいな!」を見たからですかね・・・。ゼロたんかっこいいです///
それにしてもゼロしいって書きやすい。たぶんしいなが思うように動いてくれるからなんでしょうけど・・・
ゼロロイは書きにくいんです、あずさにとっては・・・。次は久々に挑戦してみようかと・・・。


2004.11.10



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