ずっと見つめてて








「そこの素敵なハニー。」

「まぁ、神子様。ご機嫌麗しゅう。」




ほら、また声をかけてる。
俺が一番だって言っておきながらゼロスはいつもああ。
もう慣れたことだけどさ、あいつのああいう性格には。



長年培った習慣みたいなものが簡単に治るわけがないのはわかってる。
だからゼロスが悪いわけではない。いや、ゼロスが悪いかもしれないけど・・・。



ゼロスの蒼碧色の瞳は好きだと思う。けれど俺を写さない蒼碧色の瞳は嫌い。




我侭かもしれないけど、ずっと俺だけのこと見ててよ・・・。











「ハニー!ただいま〜v」

「・・・・・・」


バタンッと扉の開く音と共にゼロスの陽気な声がロイドの耳に聴こえてきた。
ロイドは一度ゼロスの方に振り返りはしたが、何も言わずまたクルッと背を向ける。
そんなロイドの反応にゼロスは首を傾げながらロイドの傍に歩み寄る。


「ロイドくん?」

「何だよ。」


トゲトゲしい口調。いつもならこんなことは滅多にない。
なのに今日に限って機嫌が悪い。朝一緒にいる時までは全然普通だったはずだ。


「な、なんだか機嫌悪くないか、ロイドくん?」

「別に。」

「酷っ!せ〜かく俺様が心配してるのにハニーってば冷たいなぁ〜」

「今宿題中。ちょっと静かにしてろよ。」


投げやりな態度のロイドに少しなりともゼロスもカチンときた。
さっきから心配しているのにこんな態度をとられれば怒っても仕方がない。
ゼロスはロイドの肩に手を置き、自分の方に向かせようとする。

しかしそれに反抗するようにロイドは捕まれた肩を思いっきり引く。


「ロイド、こっち向け!」

「ヤダ!離せよ!!」


離せと言われてもこんな状況じゃ離せるわけがない。
ゼロスはバンッとロイドを囲むようにして机に手を置く。
そしてそっとロイドの顔を覗きこむ。瞬間、ポツンと机の上に雫が落ちる。


「・・・なぁ〜に泣いてるのよ、ロイドくん。」

「・・・自分の胸に聞いてみろよ。」

「・・・はい?」


自分の胸に聞いてみろ=俺様のせい?
とゼロスは思わず首を傾げる。別にこれといってロイドの機嫌を損なう事をした覚えがない。

朝は普通だったし、昼も普通だった。

となるとその後何かロイドの機嫌を損なうことを自分がしたというのだろうか?
そう考えるがゼロスには思い当たる節がなかった。


「あの〜ロイドくん?俺様何かした?」

「した。」

「何を?」

「・・・女の人ナンパしてただろ。」


恐る恐るそうロイドに訊ねると、ロイドはゼロスの方に振り返りながらいかにも
「怒っている」といった様な表情でゼロスを見据える。


そうしてポソッとロイドの口から発せられた言葉は、意外な言葉だった。
言った本人はおろか、ゼロスでさえほんのりと顔を赤らめるくらいに。


「・・・ロイド?」

「だ、だって仕方ないだろ!?お前が女の人と話してるの見てなんだかイヤだった・・
っていうか・・・わ、わがままだってわかってるけどさ・・・」


必死で弁解しようとしていたロイドは自分が言っている事に気がつき、バッと口を手で覆った。
さっきよりもさらに顔を真っ赤にして、じっとゼロスを見上げる。
そんなロイドを見ながらゼロスはクスッと微笑しながらロイドの頭をクシャクシャと撫でる。


「わがままだとわかってるけど?」

「な、何でもない・・・。」

「それはないっしょハニ〜。言わないとキスするぞ。」

「う・・・」


ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべながらゼロスはヒョイッとロイドの顎を少し持ち上げる。
そうしてゆっくりと2人の距離が縮まる。あと数センチというところでロイドが声をあげた。


「俺の前ではナンパしてほしくない・・・かも。」

「・・・・・・」


その言葉にゼロスはコツンッとロイドの肩に顔を埋める。
そんなゼロスの様子に首を傾げながら「どうした?」と何気なく聞いてくるロイド。
しばらくそうしているとクツクツと耳元で笑う声が聴こえてきた。


「ゼ、ゼロス?」

「やばっ・・・俺様すっごく嬉しいかも・・・。」

「え?」

「だってさっきの話だとロイドくんが嫉妬してくれたってことだろvv」

「・・・〜〜〜〜〜!!!!!」


言われるまで気がつかなかったってわけか・・・。
ほんと、ロイドくんって鈍感というかなんと言うか・・・。
だからだろうな・・・素直に思ってること言えるのも。俺様には・・・無理なことだし。



・・・まぁ、ロイドくんのそんなところが好きなんだけどね。


「ローイドくん♪」

「な、何だよ!?」


ガバッといつもの様に抱きつきながらニッコリと笑みを浮かべる。
そうして赤く染まった頬にちゅっと軽くキスをして極上の言葉を呟く。


「愛してるぜ、ハニー♪」

「〜〜〜バカ・・・。」





いつもの調子のゼロスにロイドは苦笑する。




女の人と話しているのを見るのはイヤだ。
だってゼロスの蒼碧色の瞳が俺を写さないから・・・。





俺の我侭だってわかってる。
こんなこと言ったって仕方ないけどさ・・・でもさ・・・?








2人の時は・・・その蒼碧色の瞳には、俺だけを写しててよ・・・。




















++あとがき++

はい。申し訳。甘甘を目指していたらとんでもない代物が出来ました・・・。
いや、これでもましなんです!これの前に書いて方のが危険なんですよ!だから書き直したのに結果「余りかわってない」
意味がないですよね〜ほんとに。でも友達に前回のゼロロイ泣きました〜って言われて時は驚いた反面嬉しかった。
次はなんだかな〜またゼロロイ?とりあえずしばらくはゼロロイだと思います・・・。


2004.11.16



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