僕が望む唯一つのコト 君に出会えて 本当によかった あの日あの時 僕に話しかけてくれてありがとう 『もし』なんて考えたくないよ 今、この時を、無くしたくないよ… 「母さんの敵を取ったぞっ!!!」 強敵であるクヴァルを倒し、ロイドは叫んでいた。 アスカード牧場で知らされた事実は、酷かった。 お母さんの死の有様を知らされた、というのもショックだったろうけど、 僕にとっては、その母の仇がのうのうとここで生きている、という方が悔しかった。 でも、そんなキツイ現実を突き付けられてもロイドは立ち上がった。 僕、正直言って、その強さに凄く驚かされたんだからね。 「ロイドってさ、馬鹿だけど、強いよね、凄く」 「は?イキナリなんだよ、藪から棒に」 「わっ!ロイドが『藪から棒』なんて単語知ってるっ!後で姉さんに言わなくちゃっ!!」 「…おちょくってんなら、どっかいくぞ、オレ」 「あははっ!!ごめんごめん。でもさ、…お母さんの仇、取れてよかったね」 「…あぁ。オレもそう思う。…この旅が終わったら、母さんに報告に行かなきゃなっ!」 ロイドのその言葉に、僕は思わず笑った。 ロイドは何時も、未来を見ている。 過去を振り返る事はあっても、前を見続ける。未来を、追いかける。 そんなロイドが昔から好きだった気がする。 何時も後ろを向いている僕ごと、引っ張っていってくれる気がして。 「…あ、そうだ。先刻の続き。何だよ、馬鹿だけど強いって。意味分かんねぇぞ」 「そのまんまの意味だよ。ロイドって、頭は全然よくないのに、凄く強いんだーって今回よーく 分かったから」 僕の言葉の意味が分からず、ロイドは頭に?を浮かべている。 僕はそのまま話を続ける。 「強いって言っても、力の事だけじゃないよ?僕が言ってるのは、心。…本当だったら、辛いの にそれを全部振り切って、ロイドはクヴァルに立ち向かった。……もし僕がロイドの立場だっ たら、そんなにすぐ未来を見れなかったかもしれない。立ち直れなかったかもしれない。でも ロイドはそれが出来た。だから強いんだなって思ったんだ」 意外にこういう風に言うのは恥ずかしいんだなぁ……。 言い終わった時はほんのり赤くなってる気がした。頬が熱く感じたから。 「…そんな事ねぇって。オレがそんな風になれたのは、皆がいたからだ。コレットが居て、クラ トスが居て、先生が居て、しいなが居て。…そしてお前が居た。皆が居たから、オレは前を見 る事が出来たんだよ。オレが凄いって事は、そのきっかけを作ってくれた、お前も凄いって事 だと思うぜ?」 そのロイドの言葉は、僕の心をぎゅっと掴んだ。 凄く嬉しい気持ちが、僕の中を満たしていく。 先刻の熱さとは比較できないほど、熱く感じた。でもそれは、決して不快感じゃない。 ふとロイドを見ると、ロイドも恥ずかしげに頭を掻いていた。 二人してそんなんで、目が合って。思い切り笑って。 今の、この一瞬すらも愛しく思うよ。幸せに思うよ。絶対言わないけど。 「じゃあジーニアスもさっさと寝ろよ。俺ももう、寝るからさ」 「うん。明日寝坊したりしないでよ〜」 「うるせー。大丈夫だよ、じゃあな」 僕はロイドの後姿を見送ってから、ふぅとため息を吐いた。 確かに幸せだと思う。だけど、僕の心にはこんな時に限って不安が訪れるんだ。 『もし』という言葉が、影を成す。その影は、徐々に広がっていく。 ロイドに質問して、答えてもらえばすぐに解決すると頭で分かっていても。 口にする前に、言葉を飲み込む。何時も。 ずっと隠していることがあると言ったら、ロイドはどんな顔をする? 一度だけ、夢に見たことがあるんだよ。僕がハーフエルフだって真実を語る。 …夢の中のロイドは、その日から僕を見る目を変えた。友達から、異種族をに変えた。 それが僕の被害妄想が生んだものだって事も理解してる。 けどさ、やっぱり怖くなった。本当の事を言うのが。 僕たちの距離が開くような気がして、ロイドを引き止めておく事が出来ない気がして。 もし、僕がディザイアンだったら? ロイドと、戦う事になったら? 旅に出てから、毎日そんな風に思うんだ。 ほんの少し、進んだ道が違かったら、そうなっていたかもしれない。 そう思うとね、凄く、凄く怖いんだよ。 僕は、自分が震えている事に気づいていた。 「僕は…っ、どうしてロイドと同じに生まれなかったんだろっ…。そうしたら、こんな事考え無 いですんだのに…。不安に思う事も、無かったのにっ!」 誰も居ないって、分かってる。だから僕は涙を流して言った。 誰も聞いてないなら、少しくらい弱音を吐いてもいいよね? そうすれば、明日は何時もの僕にきっと戻れるから。 ロイドの隣で、笑って歩む事が出来るから。 自分にそう言い聞かせて、僕は泣いた。一人で、ひっそりと泣いた。 ねぇロイド。 僕はハーフエルフなんだよ。 ロイドのお母さんを殺した、ディザイアンと同じ、ハーフエルフなんだよ。 ずっと、君を騙してた。嘘を吐いてた。 ねぇロイド。 お願いだから、嫌いにならないで? 他には、もう何も、望まないから…。 葛餅まりんです。 連衡@真神煉獄刹.com様からのリクエストの品として書かせていただきました…が。 スイマセン、全然まとまってないですね、話が。 しかも思いっきり更新が鈍いですね、申し訳ありません。 ジーニアス中心ってことだったので、好きにやらせていただきました。 そういえばロイドとの話を書いてないなぁと思いまして。 私はロイドとジーニアスは親友希望です。恋愛対象としてではなく。 アスカード牧場のとき、ジーニアスはどんな心境だったのか…と思ってコレが出来ました。 折角リクエストしていただいたのに、こんなので申し訳ありません。 あずさ姉のように、もっと上手になる為精進させていただきます。 では、またのリクエスト、お待ちしております。 |