++れぼりゅーしょん・はーと++







今日はやけに頭がふらふらする。
先刻から背中がゾクゾクするのも気のせいではないだろう。
心なしか、息が上がる。ほんの少し歩いただけなのに。

「…ヴェイグさん、大丈夫ですか?物凄く顔色が悪いです…」

横を見ると心配そうな表情で、アニーが見つめている。
俺は何時も通りの口調で、気丈を装う。装ったつもりだ。

「…あぁ、大丈夫だ。先に進もう」

これ以上、遅れを取るわけにはいかない。
休めば、それだけクレアとの距離も広がる。
クレアは、きっと助けを待ってる。早く、追いつかなければ。
アニーはまだ何か言いたそうだったが、それをあえて無視して少し歩調を速めた。
地面が揺れているような感覚だった。景色が歪んで見える。
結構厚着をしているのに、寒気を感じている。
俺自身、少し危ないかもしれない、という自覚はあった。
そして嫌な事がある時は、大概また嫌な事が重なるものだ。
一番前を陽気に歩いていたマオが皆に向かって叫んだ。

「!!!皆っ!バイラスだよ!!!戦闘の準備してっ!!!!!」

その言葉を聞き、俺は剣を構えた。

「ヴェイグさん、本当に顔色悪いですよ?少し休んでいた方が……」

再度心配するアニーの声も、だんだん聞こえなくなる気がした。
しかし俺は差し出された手を振り払い、バイラスの元へ駆けていった。
アニーの叫び声が聞こえた気もしたが、あえて聞こえなかった事にした。

「っ瞬連塵!!!!!」

何時もより、技の切れがよくない。そこに隙が出来る。

「!ヴェイグっ!!後ろ、来てるぞっ!!!」

ティトレイの焦った声を聞いて、後ろを振り返る。
しかし、俺の背後についたバイラスは俺目掛けて突っ込んできていた。

(………最悪だ)

突然すぎて、そしてもう体が言う事を利かなくて、俺は吹っ飛ばされて、気を失った。
誰かの泣きそうな声を聞いた気がしたが、それが誰のものかは分からなかった。














「……ん?…ここは…、何処だ?」

目を覚ますと、俺はベッドの中に居た。
暫くぼーっとしていたが、自分が戦闘中に倒れた事を思い出した。

「………そうか、俺は倒れたのか。……また、時間が、クレアとの距離が…」

どのくらい倒れていたのだろう。
弱い自分の体に嫌気がさす。こんな事している間にも、クレアは。

「っヴェイグっ!!!よかった!!目を覚ましたんだねっ!!!」

わーいと言わんばかりに、部屋に入って早々マオは俺に抱きついてきた。
それを一緒に入ってきたユージーンがひょいっと持ち上げる。

「マオ。ヴェイグは病み上がりだ。抱きつくんじゃない。…まぁ、気が付いてよかったがな」

「あぁ、迷惑をかけたな、ユージーン。今すぐにでも出発…しよう」

急がなくては。
今までの遅れを取り戻さねば。
自分の事なんて、二の次でいい。
そう思って立ち上がろうとした俺を、ユージーンは少し力を入れて押し、ベッドに戻らせる。

「………今から急いで行かないと、クレアには追いつけない。…もう俺は大丈夫だ」

「ダメだ。目を覚ましはしたが、風邪が治ったわけじゃない。『大丈夫だ』なんて台詞はそれら
が完治してから言うんだな」

「そうだよ、ヴェイグ。皆それで納得してるんだし。君は早くよくなる事だけを考えててヨ!」

「だが、俺は………」

俺も二人に反論しようとした時。もう一人部屋に人が入ってきた。

「ヴェイグさん!目を覚ましたんですね!!…よかったぁ…」

半分涙目になってるアニーは、そう言って俺の傍に来て、看病を始めた。
ふっと周りを見ると、先刻まで居たユージーンの姿が見えなかった。
多分、アニーが居るから遠慮して外に出たのだろう。マオはまだその場にいた。

「聞いてよアニー。ヴェイグったらまだ全然治ってないのにもう旅に急ごうとするんだよー。ア
ニーからも何とか言ってあげてよー」

明らかに楽しんで言ってると分かるマオの口調。
その言葉と同時に、アニーの顔色も変わった。


「何言ってるんですか!?ヴェイグさんっ!まだ熱がこんなに高いんですよっ!!今外に出よ
うなんて絶対ダメですっ!私が許しません。病人は大人しく寝ていてくださいっ!!!」

強い口調で、怒られた。
マオは部屋の隅で大笑いしている。アニーに怒られる俺が相当面白かったらしい。

「今ティトレイさんがおかゆを作ってくれてますから。それを食べて、ゆっくり眠ってくださ
い。い・い・で・す・ねっ!!!??」

「あぁ………」

そう言わざるをえなかった。杖を持って殴打準備完了状態のアニーを目の前にして。
俺が諦めると、アニーはアッサリ何時もの笑顔に戻った。

「じゃあ私、水枕持ってきますね。マオ、ヴェイグさんのこと、よろしくね」

「OK・OK〜!!まっかせてヨっ!!!!」

バタンと静かにドアを閉められた瞬間、マオが楽しそうにこっちに来るのが分かった。

「あっはははは〜!!!!先刻のすんごく楽しかったっ!!ヴェイグ、アニーに言い包められて
 るんだもん!!ユージーンなら分かるけど、アニーにっ!!!!」

「…五月蝿い。……病気の時、医者の言う事は絶対、だろ。それに、心配してくれてたみたいだ
し………」

「そりゃそうだよー。ここ2日間、アニー寝ないでヴェイグの看病してたんだからー」

「…それは、本当か、マオ」

2日間も眠っていた、というより、2日間もアニーに看病させてしまったという方が驚いた。
本人も相当眠い筈なのに、あそこまで言わせてしまって、悪い事をした。

「本当も本当。僕やティトレイが『寝た方がいいよ』って言ったのに、全然聞いてくれないんだ
もん。だからヴェイグ、アニーに逆らっちゃダメだよー。女の子って、早く寝ないと肌が荒れ
ちゃうんだって。あーあ、ヴェイグ、責任取んなきゃねー」

責任、とはどう取るべきなのだろうか。
マオにそう聞いたら、また大笑いされた。もう一度聞く気にはなれなかった。

「ま、冗談抜きで。ちゃんと後でアニーにお礼言っておきなよ。本当に心配してたんだから」

「………あぁ、分かった」

それだけ言うと、マオはそれ以上何も言わないで、窓から外を眺め始めた。
俺は無意識に天井を向いた。朦朧とする頭で、不意に考え事をした。

(……それにしても、アニーが俺のことを看病していたという事は…)

アニーは俺の額に触ったのだろうか。
風邪を引いた時におばさんがしてくれたように、汗を拭いてくれたのだろうか。
そう考えると、無駄に体温が上がった気がした。
顔も赤くなったように思えて、マオに見られないように布団を深く被る。
風邪で紅潮していて、分からないことも考え付きもしないで。

(…一体、何なんだ………)

おばさんに看病されても、クレアに看病されても何とも思わなかったのに。
アニーに看病されたんだと思うと、顔が熱くなる。胸が苦しくなる。
もう自分ではどうしようも無い事は分かった。

(…次にアニーの顔を普通に見れるか、心配だ…)

ふぅ、と俺はため息を付いて、また深く眠った。
胸の痛みの答えを放棄して。まだ知りたくないと思ったから。
考えれば、今一番したい事が変わってしまう、そんな予感が俺にはあったから。












でも、気持ちは隠せない

蓋をしても、すぐに見え隠れするのが

『心』というもの。

今、この『心』は加速度を増して、進化している………









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はい、葛餅まりんです。
リバースでは思いっきりヴェイアニに転びました。
本人もビックリです。ハッキリ言って。
最初はアニーは、結構苦手キャラだったんですが、今では可愛くてしょうがありません!!
ゲーム開始前は『別にヴェイクレでいっかなぁ〜』なんて思ってた自分は馬鹿でした(ヴェイクレ好きさんスイマセン)
違う、ヴェイアニだ。真なるCPはヴェイアニだ!!!!
スイマセン、やはり戦闘に参加してくれないヒロインは、まりん的に受け付けませんでした。
んで、あっさりヴェイアニ書いてみたんですが…。
ダメだ…。どうして私はこんなに文才が無いんだ…。特に短編物になるとまるでダメです。
だらだら書ける長編物が好きらしいですね、私。
という事で、ヴェイアニ長編物でも書いちゃおうかなと考え中。
考えていくとどんどんオリジナルの方へ(もともとオリジナル書くのが好き)………。
でも自分の欲望を満たすため(もっと言い方なかったのか…)書こう!!とか思っています。
もし『読んでやるかな』みたいな気を起こしてくださったら、読んでやってください。
では〜。なるべく早く、頑張ります。