White night. 「あ・・・」 「マリン?どうかしたのかい??」 窓辺から外を眺めていたマリンがあげた小さな声に、暖炉の傍にいたシリウスは マリンの方に視線を向けながら首を傾げた。マリンはシリウスの方に振り返りながら ニッコリと微笑んだ。 「雪・・・降ってきましたよ。」 「あぁ・・・どうりで今日は寒いと思ったんだ。」 「・・・アロランディアでは降誕祭の日ですね。」 「そうだね。・・・懐かしいかい?」 そう聞けばマリンは素直に「はい」と言って頷く。 去年の今頃は遠く離れたアロランディアで降誕祭と言われる祭りごとに2人で出掛けていた。 島の中心に大きなツリーが飾られ、それを2人で見に行ったのを今でも鮮明に覚えている。 「・・・マリン。」 「何ですか、シリウス様?」 「あの時君に贈ったイヤリング・・・」 「・・・まだ大事に持っていますよ?だってシリウス様に頂いた物ですから。」 そう言いながら彼女は微笑む。 シリウスは暖炉の傍から離れてマリンの傍に寄ると、その冷えた体を抱きしめる。 窓辺にいたせいか手までひんやりとしていて、今まで暖炉の傍にいたシリウスに とっては熱を冷ますにはいい温度。 「こんなに冷えてしまって、風邪でもひいたらどうするんだい?私の可愛いシュガーさん。」 「・・・でも私が風邪をひいたらシリウス様が看病してくれますよね?」 後ろから抱きしめられた体勢のマリンはクルッとシリウスの腕の中で向きをかえる。 そうしてシリウスの顔を見上げながらそう呟く。その言葉にシリウスは「そうだね」と苦笑した。 外を見れば白い雪が空からチラチラと降ってくる。 その光景を見つめながらシリウスは腕の中にいるマリンに視線を落とす。 「雪は・・・君みたいだね。マリン。」 「え?」 ポツリと小声で呟かれたシリウスの言葉に、マリンは顔をあげる。 それと同時に見計らったようにシリウスの唇が、マリンのそれと重なり合う。 しばらくしてから解放された頃にはマリンの頬は赤く染まっていた。 「好きだよ、マリン。」 「・・・シ、シリウス様?」 「おや、君は私のことを好きじゃないのかな?」 「す、好き・・・ですよ?だから私はここにいるんです・・・。」 その言葉にシリウスはクスと微笑しながら「ごめん」とマリンに謝罪した。 信じていないわけじゃない。むしろ彼女が自分を好きでいてくれるという自信はある。 故郷を捨てて、自分と一緒についてきてくれたのだから、自信がないわけがない。 それでも時々不安になる。 「マリンはアロランディアに帰りたい?」 「・・・帰りたいですよ?でも、まだいいです。」 「・・・何故?」 「だってシリウス様言いましたよね?2人で帰ろうって。」 そう微笑みながらマリンの言った言葉に、シリウスは驚きを隠せなかった。 確かに「2人で帰ろう」と言った。それは嘘でもなんでもない、本当の言葉。 ただそれを彼女が覚えてくれていたことが嬉しかった。ただただそれが嬉しくて・・・。 「・・・そう、だね・・・マリン。」 「はい?」 「いつか・・・2人でもう一度降誕祭に行こうか?」 いつか・・・もう一度あの地を踏もう。 2人が夢をみたあの地に。 君と私が出会った、あの奇跡の島に・・・・。 |