LIE 神様なんていない。 あの時からずっとそう思い続けてきた。 神様なんて必要ない。 助けて欲しい時に助けてくれないから。 「ねぇ、マリン殿。君は神様を信じるかい?」 「・・・え?」 「だからね、神様という存在を信じるかいと私は聞いたんだよ。」 シリウスの唐突な質問にマリンはキョトンと目を丸くした。 真っ直ぐと自分を見つめるシリウスの瞳は真剣さが帯びている。 そんなシリウスと同様、マリンは真っ直ぐシリウスを見据えながらふんわりと微笑む。 「いると思います。」 「どうしてそう思うんだい?マリン殿は神様を見たことがある?」 「ないですよ。でも、神様はいると思います。」 「神様はいる」マリンはそう言い切った。 何の躊躇いもなく神様は存在すると。 そんな彼女を見ているとまるで昔の自分を思い出す。 純粋に「神様」という存在を信じていたあの頃の自分を・・・。 もう元には戻れないあの頃の自分を・・・。 「シリウス様は信じていないんですか?」 「信じてませんよ。それに私には神様なんて必要ないからね。」 「そうですか・・・。でも私はやっぱり神様っていると思います。 だってシリウス様に出逢えたのはきっと神様のお陰だって思いますから。」 シリウスの答えに残念そうな表情を浮かべながらも、マリンはそう呟く。 サラサラと彼女の赤茶の髪が風になびくのを見つめながら、シリウスは苦笑する。 「君には本当に・・・な。」 「え?」 「いえいえ、何でもありませんよ。」 「アリマセンヨー」 微かな声で呟かれたシリウスの言葉が聞き取れなかったマリンはクルンッと シリウスの方を向くと、キョトンと不思議そうな表情を浮かべる。 そんな彼女の前に親友ともあろうボビーを出し、シリウスはその場を誤魔化した。 「帰りましょう」とマリンはクルンッと方向転換するとゆっくりと歩き出す。 シリウスは先を歩き出したマリンの背中を見つめながらクスクスと笑う。 「本当にマリン殿にはかなわないな・・・」 神様なんていない。 あの時から今までずっとそう思い続けてきた・・・。 神様なんて必要ない。 私に必要なのは・・・いつも私を癒してくれる君だけ。 君が傍にいてくれればそれでいい。 ・・・だから私には神様なんて必要ないんだよ、マリン殿。 |