The passing heart この部屋から出たくない。 アクアはそう思っていた。 この人にくっついて、ダリスまで来たのに。 知り合いも、誰も居ない、異国まできたのに。 「……この仕打ちは、あんまりだわ」 人が3人は余裕で寝られる位の大きいベッドにアクアはうつ伏せになって呟いた。 ここ最近ずっとパーティ続きで、かなり疲れているから、仕方がないのかもしれない。 しかし、こんな状態になってる一番の理由は、『拗ねている』だ。 シリウスと、一緒に居たいと思った。 だから優しくしてくれた先生、美味しいご飯を作ってくれるユニシス。 それに他の皆ともお別れをして、このダリス王国に来たのに。 この世でもっとも自分に近い人にも、お別れを言って来たのに。 自分を必要としてくれた、あの人よりも、シリウスを選んだのに。 「…なのに、シリウス、私にぜんぜん構ってくれない…」 アクアをパーティに出すだけ出して、シリウスはアクアから距離を開けていた。 それがすごく悲しかった。何でか、分からなかった。 聞こうとしても、話す時間さえ、最近はない始末だ。 「………このままじゃ、嫌。何の為にダリスに来たか分からない。…きちんとシリウスと、お話 しよう」 思いたったら即行動。女は度胸、行動力。 そう胸に刻んで、アクアは高級感溢れる自室から抜け出して、シリウスの部屋へと向かった。 他の人に見つかると後が面倒臭いので、コソコソと城内を歩き回る。 実は結構、こういうのが得意だったりするアクアである。 もしもとなったら、魔法院に居た時に覚えた魔法で、姿を消すくらい出来る。 そんなこんなで、小さな冒険をしつつ、アクアは目的のシリウスの部屋に辿り着くことが出来た。 小さく、2回ノックする。すると何時のも調子で、返事が返ってきた。 「はいは〜い。誰ですか〜?」 「……私。アクアよ。…ちょっとお話があって、きたの…。…今、大丈夫?」 アクアがそう答えると、暫く間が空いて、返事より先に扉が開いた。 「……どうしたんだい?何か、問題でも起きたのかな?お姫様v」 「…少し、お話がしたいの。…時間が取れれば、だけど」 「えぇ、今は暇だから大丈夫ですよ。…さ、お姫様、お入りくださいv」 さっとシリウスはアクアの為に道をあける。アクアもそれに答えて、部屋に入った。 何時も座っている椅子に、お互い腰を下ろす。 シリウスは何処からかお茶の用意まで持ってきた。 「で、どうしたんだい?お姫様。急にレディーが男性の部屋を訪れるなんて、余り良い事じゃあ ないな」 すっとお茶をアクアの前に運びながら言う。 そんな事を言ってるが、口調は全然怒っていない。 お茶は、まだ熱かった。息を吹きかけてもまだ飲める熱さじゃないだろう。 そう思って、アクアはまだお茶を飲む事を諦めた。 その代わりに、シリウスの顔をじっと見つめてやった。 「?私の顔に、何か?」 「……聞きに、きたの。私は、あなたが好きだから、ついてきたの。でも、シリウスは?私の事、 どんな風に思ってるの?…ずっとパーティばっかりで、他の男の人たちとばっかりお話しして、 シリウスとはお話し、してない。私が好きなのは、シリウスなのに」 最初は何時もの様にかわそうと思っていたが、アクアの表情が、それをさせてはくれなかった。 真剣み帯びてて『絶対にはぐらかせない』と言っているようだったからだ。 「…私が最初に言ったでしょう?色々な男性に会って、それでも私が一番だと思ったら、私の所 に来なさいって。だから、貴女はまだまだ、色々な出会いをするべきなんですよ」 「…もういい。…だって、私はシリウスが好きなんだもの。他の誰でもない、あなたが。だから ここまでついてきたんだもの。…他の人と会ってて、シリウスとお話しする事も出来ないんだ ったら、もう誰とも会いたくない。…少しだけ、寂しいの。…一緒に、居たいの」 これが、精一杯の気持ちだった。 どう伝えればいいのか、よく分からない。 でも一生懸命伝えた。本当に寂しいから。一緒に居たいから。 きちんと言えば、シリウスも分かってくれると信じていた。だから勇気も出せた。 しかし、その予想は一瞬でことごとく打ち砕かれた。 シリウスは何も言わず、困ったような、そんな表情をした。 誤魔化そうとしているわけじゃなく、本当に、どう言ったら良いか分からないといった表情だ。 その顔を見たら、ふいに涙が流れた。声にならない、声が出た。 その姿を見て、流石のシリウスも驚いた表情を見せた。 しかしシリウスが何かを言う前に、アクアは物凄い速さで、部屋を飛び出した。 涙は、当分止まりそうもなかった。 何を信じて、ここまで来て 何を求めて、ここに居る あの日、ついていこうと決めた日 見えていた、あの光。 それは、今、見えない。 ++あとがき++ にならないですよね?むっちゃ続いてますがな。 まじめにサイト運営を手伝わない、葛餅まりんです、どうも。 いや、本当はちゃんと終わりにしようと思ってたんですけどね。 でも長くなりそうだし、丁度いいからここで切っちゃおうと思って。 何か果てしなくシリ←アクです。 あずさ姉さんに言ったら殺されそうな勢いです。 寧ろ全国のシリアクファン様、シリウスファン様に指される勢いです。 でも、まりんとしてはシリアクED、どうしても親子にしかみえなかったんです。 どっちかっていうとシリ←アクにしか見えなかったんです。 そういうわけで、この話が生まれました。 お見苦しい所も多いですが、ここまで読んでくださってありがとうございましたv では、失礼させていただきますv…次で終わるかな? 2004.12.1 |