It is to a side 君は知らない。 僕は言うつもりは無いから。 だって、君と一緒に笑っていたいじゃない。 せめて今だけ。 アルテスタの家の扉を開けて、僕は聞きなれないメロディーを聴いた。 どうやらそれは鼻歌のようで、歌詞は聞こえてこない。 音が楽しげに弾んでいて、鼻歌を歌っている人物が上機嫌なのが手に取るように分かる。 その音源に近づくにつれて、僕としてはもう大体予想がついていた。 「…ジーニアス、ご機嫌だね。…一体、何をやってるの?」 僕はにっこり、鼻歌を歌っていたジーニアスに語りかける。 ジーニアスは驚きつつ振り返って、少し照れて笑った。 「あ、ミトス。今丁度ケーキ作ってる所だったんだっ!後で一緒に食べようねっ!!」 よく見てみれば、ジーニアスの鼻の頭には白いクリームがちょっと乗っかっている。 そんな彼が余りにも愛らしくて、僕はくすっと笑った。 わけが分からなくて、ジーニアスは頭に?を浮かべている。 このままにしておくのも別にいいかな、可愛いし。とか思ったけど。 他の人にコレを見せるのはちょっと癪に障るから、っと思ってひょいとクリームを取ってあげる。 取られてやっと気がついたらしいジーニアスは、また赤い顔をしていた。 ケーキはもう、仕上げの段階まで来ていた。 ジーニアスが綺麗に、美味しそうに装飾していくのをじっと見ていた。 「ねぇ、ミトスも一緒にやろうよ、ほら、クリームをこうやって・・・」 一生懸命説明しているジーニアスも、やっぱり可愛いと思う。 絶対怒ると分かっているから、本人には言わないけど。 装飾も終わって、お茶が出来るまで暫く話していた。 料理をする時のジーニアスは何時もより楽しそうに見える。 本当に、好きなんだろうなってすぐに分かるくらい。 思わず僕はピンクでフリフリのエプロンを着たジーニアスを想像しちゃったよ。 「ジーニアスは、本当に料理が好きなんだね。とても楽しそうだもの」 「えへへー、分かる?まぁ、姉さんは昔から料理下手だったし、僕が覚えるしかなくて、最初は 自然と身に付いたんだけどね。いつの間にか楽しみになってたんだ、色々な料理を作るの」 そんな事を話していると、ヤカン大きな音で鳴く。 僕達は一緒にお茶を淹れ、少し遅いお茶会を始める事にした。 最近、僕はこんな時間が嫌いじゃない事に気が付いた。 4000年前を少し思い出した気がする。 姉さんも、こんな風にケーキを作って、お茶を淹れてくれた。 僕が『美味しい』って言うと、本当に嬉しそうに笑うんだ。 ジーニアスも一緒。食べた人が『美味しい』と言うと、極上の笑顔を返す。 そんな所、ジーニアスは姉さんに似ているかもしれない。 この時間を、誰にも邪魔されたくないって思った。 姉さんの時には絶対クラトスとかユアンが居たからね(特にうざい程ユアンが) でもそんなお邪魔虫は必ずどの時代にも居るものだ。 「お!いー匂いだなぁ!ジーニアスとミトスだけで食ってるなんてズルイぞ〜。俺達にも食わせ ろっ!!なぁーコレット」 「うんv私もジーニアスのケーキ、大好きvvねぇ、私達も食べていい?」 お邪魔虫の名前は天然系単純剣士ロイドと最凶腹黒天使コレット。 もし正体をバラしていいなら、この時点でユグドラシルレーザー打ってるよ、僕は。 折角2人のお茶会なのに、邪魔されたくなんか、ないのに。 でも僕が返事をする前に、僕の可愛いジーニアスが先に返事をしてしまった。 「うん!もっちろん!今2人の分もお茶淹れるから、先食べてていいよ〜!」 嗚呼、僕のジーニアスは優しいから…。 本当は嫌だなって思ってても、断れないんだよね。分かってるよ、僕には。 2人分のお茶を淹れて、ジーニアスが戻ってくる。 そして今度は4人で食べ始める。勿論ジーニアスの隣の席は僕がキープしてるけど。 しかし僕はここで欠点に気が付いた。それは。 (向かいの席に座ってる方がジーニアスとしゃべりやすいじゃないかっ!!!) その証拠に、ジーニアスは向かいに座っているロイドと楽しそうに話している。 そこにちょびちょびコレットも話に参加している。 くそっ!!幼馴染攻撃かっ!!負けるもんかっ!! 心の中ではこんな風に言ってるけど、僕はその態度を全く表には出していない。 伊達に4000年以上生きてるわけじゃない。ポーカーフェイスは完璧さ。 しかし僕が話しかけようとすると、狙ったようなタイミングでコレットが話しかける。 「でも本当に美味しいよね、ジーニアスのお料理って。私、大好きv」 「えへへvvありがとう、コレット。ほら、ロイドもちゃんと言ってよねー」 「分かってるって。美味い美味い。ほんっと、姉弟なのに何でこんなにも落差が…」 「…ロイド、それ、姉さんの前じゃ言っちゃ駄目だよ……」 あ…僕を省いて会話が弾んでる…。何だか凄い、疎外感だ。 ジーニアスの笑顔は、本当に眩しい。あの時の姉さんと同じ。 その笑顔が僕のだけだったら、物凄く嬉しいんだけど。 他の人達にも向けられてるって思うと、最近イラついてる僕が居るのが分かった。 ジーニアスは優しいから、頭では分かっていても、心はそうはいかないみたい。 僕だけ見ていて欲しい、僕にだけその笑顔を向けてよ。 寧ろ、僕以外に見せないで。嫉妬で人は、殺せるんだよ? 「…トス…ミトス!!どうしたの?急に何も喋らなくなってっ!どっか変なところに詰まっ た?平気??気持ち悪いの?」 気が付くと、目の前にジーニアスの顔が広がっていた。 その表情は先刻と打って変わって不安げで、心配している顔だ。 優しく僕の背中を擦っている。 たったそれだけで、僕の先刻までの考えは吹っ飛んでしまった。 体中が熱くなってくのが分かった。胸もドキドキする。 それでも僕はジーニアスに心配掛けないように、言葉を紡いだ。 「…ううん、大丈夫。ただ、少し皆が羨ましくて。…僕、皆と知り合ったの、つい最近だから、 ちょっと話に入るの、まだ慣れてなくて…―――」 しおらしく、儚げに言うのが相手の心を揺さぶるポイントなんだ、知ってた? 案の定、僕の可愛いジーニアスは真剣な顔で僕を見た。 「そんな、気づかなくてごめんね、ミトス。でもね、僕にとって、ミトスはもうとっくに大切な 友だちなんだよ。だから、ミトスもどんどん話しかけてきてよっ!」 友だちだけじゃなくてもいいんだけどね★寧ろその上を希望するよv しかしここで予想外の事が。 ジーニアスはそう言いながら僕の両手を掴んできた。 いや、たったそれだけの事なんだけど、僕にとってはもう、何と言えばいいのか。 恥ずかしいような、嬉しいような、そんなのが入り混じった感じ。 しかも僕に今向けている笑顔は果てしなく可愛いもの。 ああ、本当に連れて帰りたくなってきたよ、ジーニアス。 「おっ!ミトスもジーニアスも仲良しだなぁ〜」 「本当v…あ、ロイド。このケーキちょっと貰って外に行かない?確かゼロスとしいなも居たと 思うから。持っていってあげようよ」 「そうだなっ!さっすがコレット、優しいな!!」 「えへへ〜vvそんな事ないよ〜」 ナイス、腹黒神子。でも絶対確信犯だと思うよ、僕は。 だってロイドと外に向かいつつこっちを見てニヤっと笑ってるんだもん。 しかもちゃっかりロイドに自分の優しさをアピールしてるし。只者じゃないね。 まぁいいや、結局ジーニアスと2人っきりに戻れたし。 「ねぇ、ジーニアス。僕、君に聞きたい事があるんだけど、いい?」 2人が見えなくなったことを確認して、僕はジーニアスを真剣に見つめた。 ジーニアスはケーキを口に運びつつ、こっちを向いてくれた。 僕としても答えをはぐらかされたくないので、彼の口の中が無くなるまで待った。 「あのね、もし僕が遠くに行かなきゃならないって分かって。君に一緒に来て欲しい、って言っ たら、来てくれる?」 「…ミトス、何処かに行っちゃうの…?」 「ううん。だからもしもの話。…ねぇ、一緒に来てくれる?僕の向かう道が、かなりの困難が待 ち受ける道だとしても」 何せ姉さまを生き返らせる為の道だからね。もう既に4000年以上掛かってるし。 ジーニアスは考えていた。でも暫くして、にっこりと笑みを返してくれた。 「…ミトスが、僕の力を必要としてくれてるんだったら、僕はミトスの力になりたいと思うよ。 困難かもしれないけど、でもミトスが絶対叶えたいっていう願いだもん、僕も頑張るよ!」 「本当?絶対だよ、もしそんなことになったら、絶対一緒に居てね」 「うん!もっちろん!!」 2人して、声をたてて笑った。 ああ、僕の笑顔って嘘だらけ。心では、笑ってなんていないのに。 知ってるよ。君が絶対僕と同じ道を歩んでくれないって。 逆に、僕の敵に回るって。 この約束が、嘘になるって。君を苦しめるって。 でも僕は止まらない。止まる気も無い。 だってそれを支えに4000年もの長い時を生きてきたんだもん。 本当は、力で捻じ伏せてでも一緒に居たいけど。 そうして手に入れた君は、本当の君?いつでも僕に、笑いかけてくれる君? そんな君じゃないなら、いらない。 さぁ、どうやって手に入れようかな? ほら、僕が今、こんな事を考えてるなんて、ジーニアスは全く知らない。 いいよ。まだ知らなくていいよ。本当の僕を。 大丈夫、きっと今君が見ている僕も、本当の僕だろうから。 君にドキドキするのも、きっと本当の僕。 少しずつ、僕のカケラたちを見せてあげるよ、ジーニアス……。 ++あとがき++ ごめんなさいごめんなさいごめんなさ。 まずはあずさ姉さんに謝ります。遅くなってゴメンなさい。 5日も借金(と書いて小説と読む)を待ってもらいました。 辛抱強く待ってくれたあずさ姉さん、ありがとう。 次にミトスのファンの人にごめんなさい。 あずさ姉さんが『何かその他が寂しいから書け』と言ったのでこれが出来ました。 最初は『よーし!真面目(?)なミト→ジニ書くぞぉ〜』とか思ってたんですが。 いつの間にかミトスが壊れてました。何でだろう??? でもまぁ、シリアス系とかラブラブ系はあずさ姉さんが書いてくれるだろうし。 妹のまりんはギャグに走ろうかな、じゃあいっか、っと言うわけです。 しかしお陰で私、ミト→ジニが結構好きなこと判明。でもジニプレも好きなのですよー。 私が書いたシガナイものを読んで下さった方、ありがとうございます。 でも情けないモノですいません。 ではこのへんで。次回はもっと楽しいのが書けるといいな、しかも早く(高望みしすぎ) 早くハウルが見たい11月の16日。 |